■ 歴史に隠された一つのお話(エピローグ) ■
ゴ―ン…ゴーン…澄み切った空に鐘の音が響く。
王都バーハラ近くの小さな教会。そこにかつての解放軍の面々は集まっていた。
「しかし…まさか結婚されるとはな…驚いたぜ」
「前から怪しいとはおもってたんだよな〜」
口々にそんな事を言い合う中、今回の主役が姿を現した。
一人はもちろん、セリス。そして、その横にウエディングドレスを着て立っているのは…

そんな光景を…ラナは近くの木の影から見ていた。
と、其の背に声がかかる。
「本当に…これで良かったのか?」
さして驚きもせず振り返った先には、レヴィンがいた。
「ええ。全て計画どおり…よ。これで…ユリアは幸せになれるはず…」
と、悲しげに笑うラナ。その悲しみは何処に向けられたものだろうか?
「しかし…お前もセリスの事が好きだったのではないのか?」
気遣わしげに訊くレヴィン。
「ええ…そうよ…」
「ならば、悪役を演じてまでユリアと結ばせる意味とは…何だ?」
暫くして…ラナは呟いた。
「私は…セリス様にもユリアにも悲しい想いをさせたくなかったから…。やりかたは少々乱暴だったけど」
「まあ…お前が満足なら私は何も言わないが。で…これからどうするんだ?」
ふと、そんな事を訊くレヴィン。
「奴を…マンフロイを倒しに行くわ。協力の条件として見逃したけど…いつセリス様達に牙をむくか分からないから…」
「そうだな…なら、私も協力させてもらおう。お前の母親には借りがあるからな」
遠い目をしながら呟くレヴィン。前の戦いでも思い出しているのだろうか…。
「有難う。では…行きましょうか。私はここに相応しい人じゃないから…」
そう言うとラナは教会に背を向けて歩き出した。
それにレヴィンも続く。

その後、彼女達がどうなったのか知る者は誰もいない…
ただ…ここにはセリスとユリアは幸せに暮らした事のみを…記す。

                              (The End)
[前編][後編] / [エピローグ]
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